その不安感は「パニック障害」かも

<薬なし、自分で治すパニック障害> 

森下克也[著] 角川SSC新書[出版]

この本の著者は、「パニック障害」の治療に20年以上取り組んでいるクリニックの医師です。こちらのクリニックでは「パニック障害」の治療を西洋薬(合成薬)を用いる以外に、東洋医学(漢方薬)や心理療法を積極的に用いて治療効果を上げていらっしゃるそうです。この本は、「パニック障害」の原因を「脳の青斑核(せいはんかく)や扁桃体(へんとうたい)の異常」であり、そこだけを治療のターゲットとして薬物で抑え込むというやり方よりも、脳だけでなく、身体、心理、社会環境など全てを含めた全人的な問題として捉えなおすという主旨で書かれたそうです。とにかく薬で抑え込んでしまえという発想は、製薬会社が自分の儲けを増やすための陰謀ではないかとも感じられます。

私がこの本に興味を持ったきっかけは、自分にパニック障害気味のところがあるのではと感じていたからです。というのは、私は昔から満員電車が異常なくらいイヤで、通勤する時は人が混まないように1時間近く早く家を出てたり、電車に乗っている時に何かのきっかけ(非常停止ボタンが押されたとかで)電車が止まったりすると、いてもたってもいられなくなるくらい不安な感情がこみあげてくることが、たびたびあるからです。

この本に書かれている「パニック発作」(「パニック障害」と診断される前の症状)の特徴を眺めていると、「発汗」、「腹部の不快感」、「めまい」、「息苦しさ」など、いくつか自分にも該当する項目がありました。そして、これらの症状は、普段の生活の中では現れることはなく、ある特定の状況(私の場合は、混んでいる電車が停止した時)に限って出るというところは、まさに「パニック発作」のように感じられます。

この本では、「パニック発作」に襲われた時に、薬に頼らず、すぐにできる対処法がいくつか紹介されています。そのなかで、私が今でも実際にやっている効果的なものを以下に記します。

・腹式呼吸を行う:鼻からゆっくり息を吸い、その後、軽く口をすぼめて長く息を吐く。息を吸う事、息を吐くことに意識を集中する。

・ミント系のタブレット菓子をなめる:ミントには緊張緩和作用があり、また、そのスーっとする間隔に意識が向かうことで、不安感から意識をそらすことができる。

とにかくオリジナルの対処法でかまわないので、自分なりに「これをやると不安感から逃れられる」という方法をいくつか用意しておくことが大事です。使わなくても、持っているということが安心感につながります。

この本で一点だけ気になる記述があります。それは、P157で漢方薬の長所として「危険な副作用がありません」と書かれているところです。著者は東洋医学にも造詣の深い方のようですから、漢方薬が人によっては深刻な副作用をもたらすことを知らないわけがないと思うのですが。特に、食物アレルギーのある方は、漢方薬の服用には十分注意した方が良いです。ごく普通に用いられる生薬の甘草(カンゾウ)や生姜(ショウキョウ)でさえ、人によっては重篤なアレルギー反応を引き起こしますので、この点だけは注意してください。そして最後に、「パニック障害」に似た症状には、狭心症や不整脈など命に係わる病気もありますので、まず専門医にご相談するのが一番です。

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