「 読んだ本 」一覧

「運転者」喜多川泰(著)

 

 とても素敵なお話で、おそらく多くの方々がこの本を読んで「生きる勇気を得られた」、「私も明日からできるだけ頑張ってみよう」という気持ちを抱けるようになると思います。この本にちりばめられた珠玉の言葉を紹介します。

【<運>とは何か?】

P65:運は<いい>か<悪い> で表現するものじゃないんですよ。<使う><貯める>で表現するものなんです。だから先に<貯める>があって、ある程度溜まったら<使う>ができる。少し貯めてはすぐ使う人もいれば、大きく貯めてから大きく使う人もいる。そのあたりは人によって違いますけれどね。どちらにしても周囲から<運がいい>と思われている人は、貯まったから使っただけです。

P66:頑張っても報われないときは運が貯まっているんですよ。努力をしてすぐ結果が出たり、何かいいことが起こったりする人は、貯めた運を小出しに使っているだけで、他の人より取り立てて運がいいわけではないですよ。同じだけ努力したのに結果が出なかった人は、その分、運を貯めたんです。あとでもっといいことが起こります。

P99:頑張っているのに報われないって言う人はみんな、種を蒔いてそれを育てているんですが、ちゃんとした収穫時期の前に「まだ育たない」と言って嘆いているようなもんです。もっと長い目で見たら、報われない努力なんてないんですよ。あまりにも短い期間の努力で結果が出ることを期待しすぎているだけです。今日頑張って明日実になるなんて、どんなに早く育つ種でも無理なことですよ。

【運を上手に使うにはどうしたら良いのか?】

P54:とにかく、大事なことですから忘れないでくださいよ。運が劇的に変わるとき、そんな場、というのが人生にはあるんですよ。それを捕まえられるアンテナがすべての人にあると思ってください。そのアンテナの感度は、上機嫌のときに最大になるんです。逆に機嫌が悪いと、アンテナは働かない。機嫌が悪いだけでアンテナがまったく働かないから、すべての運が逃げて行っちゃうんです。

P98:運が好転するということは、別の言い方をすると、人生のターニングポイントということです。つまり、そこを起点として人生がどんどん良くなっていくのであって、そこで何かすごいことが起こるというわけではないんですよ。あとから考えれば「あそこが始まりだったな」と気づくだけです。だからもちろん何も起こらないわけではないんですが、何か特別なことが起こったようには感じられないんです。

【上機嫌でいるにはどうすれば良いのか?】

P93:「あんたの言う通り、俺の基本姿勢が不機嫌だというのは、自分では気づかなかったけどそのようだ。でも、どうやったら上機嫌でいられるというんだよ。」「ちょっと損得から離れるといいですよ」「損得から離れる?」「ええ、そうです。自分が得しそうだと思ったら行動する。損しそうだと思ったらやめる。それがあまりにも当たり前のように染みついてしまっているんだと思います。もっと純粋に未知のものに対して『楽しそう』『面白そう』って思ってみていいんじゃないでしょうか」

P105:「何が起こるか分からないが、起こることを楽しんでみよう」そう腹を決めてみると、自然と上機嫌になれた。「なるほど、上機嫌でいるというのは、楽しいことを期待するのではなく、起こることを楽しむと決めるということなのかもな」

P235:「起こった直後は『最悪』と思っても、時間が経って考えて見ると『むしろ良かったんじゃないか』って思えることばかりですからね、人生なんて。だから、最初から『むしろ良かったんじゃないか』って思うと、結構いろんなことが楽しめるもんですよ。」

【<運>を貯める方法】

P132:「ちりも積もれば山となるじゃなくてさ、最初から山みたいに運を貯める方法ってないのかよ」「ありますよ」「どうすればいい。教えてくれ」「誰かの幸せのために自分の時間を使うんです・・・(略)・・・誰かの幸せのために自分の時間を使うじゃないですか。そうすると、それによって何かを得ますよね。そのときしてあげたことと、してもらったことの差が<運>です。」 

P168:「人間の一生が、自分だけの物語の完結だと思って生きるのであれば、生まれた時に与えられた条件を使って、できるだけ自分の欲望を満たした方がいい人生だというとこになってしまうかもしれませんが、実際には人間の一生は、延々と続く命の物語のほんの一部でしかありません。・・・(略)・・・ それぞれの時代に生きた人が、延々と続く命の物語の一部を精一杯、自分の役割を果たすように生きてくれたから、次の世代は、前の世代よりも<いい時代>に生まれ育つことができるようになる。そして今あなたが、その命の物語というバトンを受け取って生きているんですよ。」

【本当の<プラス思考>とは?】

P176:「自分の人生にとって何がプラスで何がマイナスかなんて、それが起こっているときには誰にもわかりませんよ。どんなことが起こっても、起こったことを自分の人生において必要な経験に変えて行くというのが<生きる>ってことです。・・・(略)・・・自分に都合のいいことをイメージしていれば、それが起こるなんて、プラス思考じゃないですよ。本当のプラス思考というのは、自分の人生でどんなことが起こっても、それが自分の人生においてどうしても必要だったから起こった大切な経験だと思えるってことでしょう。」

P178:「いいと思うんです、多くを求める人生であっても。要は貯める運の方が多い生き方をすれば。人生トータルで使った運よりも貯める運の方が多い生き方をすれば、立派に自分の役割を果たして生きているって言えますし、トータルでプラスになっているじゃないですか・・・(略)・・・誰よりも運を貯める生き方をする。貯めた運の半分ぐらい使って生きる。それでも誰より得るものが多い。そんな生き方ですよ、本当のプラス思考って。」

P184:「誰かと比べるのをやめるといいですよ。他の人の人生と比較するのをやめて、自分の人生に集中して。他の人はその人の人生を生きて、その人の役割を果たしています。だから多くを持っているように見えても、上手く行っているように見えても関係ないじゃないですか。それよりもあなたの人生をしっかり見つめてみてください。そうすれば、自分がどれだけ恵まれているかわかります。」

 最後に一言。この本を最後まで読んで本を閉じてしまうのは、ちょっと待ってください。エピローグまで読み終えたら、ぜひ、最初のプロローグに目を通してください。きっと、新しい発見がありますよ。


「呪い」の研究

<呪いの研究 拡張する意識と霊性>

中村雅彦[著] トランスビュー[出版]

 

おどろおどろしい題名とは裏腹に、いわゆる『明るいスピリチュアル』だとか『みんなと繋がるトランスパーソナル』に心惹かれる人にはぜひ読んで欲しい本です。大学の心理学教授であり、同時に四国の神社の神職でもある著者だからこそ書ける現場の生々しいエピソード満載で、スピリチュアルの暗黒面に読んでいて目からウロコが落ちる思いでした。

 

例えば、21世紀の現代日本においても、いまだに「拝み屋」たちが暗躍しており、彼等は昼夜を問わず殺るか殺られるかの呪術戦を行っているとか、「犬神憑き」など邪悪な憑き物を落とすお祓いとか、四国は日本の中でも特に、いにしえの血が濃いところのようです。

 

著者曰く、真性の霊媒体質者には、「神仏の世界」からお呼びがかかる日が必ずやって来るとのこと。それは、決して明るく幸せな体験ではなく、その真逆の、人生の辛酸を嘗め尽くすような体験の果てになるそうです。つまり、普通の人なら耐えきれないような極端な貧乏、病気、骨肉の争いを経て、一度は自殺を試みるが、なぜか助かってしまうとか。そういう人が「拝み屋」として生きて行くことになるのだそうです。霊媒体質でなくてよかったです。

 

スピリチュアルでトランスパーソナルな人々が陥る危険な罠に、『偽りの霊性』というものがあります。『偽りの霊性』には、『霊的防御』と『攻撃的霊性』の2つがあります。『霊的防御』とは、一言でいうと不幸自慢、こんなに困っている私はエライ、選ばれた人間なんだ、みたいな人。『攻撃的霊性』とは、一言でいうとナルシスト、どうしてみんな私のすばらしさを分かってくれないの、というかまってちゃん。

 

『霊的防御』の一形態としては、「プラス思考」とか「ポジティブ・シンキング」も含まれる。闇雲にプラス思考をしたところで、失敗の原因を合理的に分析し、適切な対策を講じなければ何も事態は変化しない。現実逃避のためのプラス思考は百害あって一利なしなのである。

 

 

『攻撃的霊性』とは、他者を拘束し、自分を支持するようにしむける手段として、自分が霊的に発達していると主張すること。これは実は、自分が他者から拒絶されるのではという恐れを含み、ひいては「本当の自分」に目を向けない、向けたくないという現実逃避である。

 

 

私もそうだが、スピリチュアルとかトランスパーソナルに興味を持つ人は、その世界は明るく楽しいばかりではなく、一歩間違えればカルトやオカルト、暗黒面に落ちる危険性があることを忘れてはならない。

 

 


その不安感は「パニック障害」かも

 

<薬なし、自分で治すパニック障害> 

森下克也[著] 角川SSC新書[出版]

 

この本の著者は、「パニック障害」の治療に20年以上取り組んでいるクリニックの医師です。こちらのクリニックでは「パニック障害」の治療を西洋薬(合成薬)を用いる以外に、東洋医学(漢方薬)や心理療法を積極的に用いて治療効果を上げていらっしゃるそうです。この本は、「パニック障害」の原因を「脳の青斑核(せいはんかく)や扁桃体(へんとうたい)の異常」であり、そこだけを治療のターゲットとして薬物で抑え込むというやり方よりも、脳だけでなく、身体、心理、社会環境など全てを含めた全人的な問題として捉えなおすという主旨で書かれたそうです。とにかく薬で抑え込んでしまえという発想は、製薬会社が自分の儲けを増やすための陰謀ではないかとも感じられます。

 

私がこの本に興味を持ったきっかけは、自分にパニック障害気味のところがあるのではと感じていたからです。というのは、私は昔から満員電車が異常なくらいイヤで、通勤する時は人が混まないように1時間近く早く家を出てたり、電車に乗っている時に何かのきっかけ(非常停止ボタンが押されたとかで)電車が止まったりすると、いてもたってもいられなくなるくらい不安な感情がこみあげてくることが、たびたびあるからです。

 

この本に書かれている「パニック発作」(「パニック障害」と診断される前の症状)の特徴を眺めていると、「発汗」、「腹部の不快感」、「めまい」、「息苦しさ」など、いくつか自分にも該当する項目がありました。そして、これらの症状は、普段の生活の中では現れることはなく、ある特定の状況(私の場合は、混んでいる電車が停止した時)に限って出るというところは、まさに「パニック発作」のように感じられます。

 

この本では、「パニック発作」に襲われた時に、薬に頼らず、すぐにできる対処法がいくつか紹介されています。そのなかで、私が今でも実際にやっている効果的なものを以下に記します。

 

・腹式呼吸を行う:鼻からゆっくり息を吸い、その後、軽く口をすぼめて長く息を吐く。息を吸う事、息を吐くことに意識を集中する。

・ミント系のタブレット菓子をなめる:ミントには緊張緩和作用があり、また、そのスーっとする間隔に意識が向かうことで、不安感から意識をそらすことができる。

 

とにかくオリジナルの対処法でかまわないので、自分なりに「これをやると不安感から逃れられる」という方法をいくつか用意しておくことが大事です。使わなくても、持っているということが安心感につながります。

 

この本で一点だけ気になる記述があります。それは、P157で漢方薬の長所として「危険な副作用がありません」と書かれているところです。著者は東洋医学にも造詣の深い方のようですから、漢方薬が人によっては深刻な副作用をもたらすことを知らないわけがないと思うのですが。特に、食物アレルギーのある方は、漢方薬の服用には十分注意した方が良いです。ごく普通に用いられる生薬の甘草(カンゾウ)や生姜(ショウキョウ)でさえ、人によっては重篤なアレルギー反応を引き起こしますので、この点だけは注意してください。そして最後に、「パニック障害」に似た症状には、狭心症や不整脈など命に係わる病気もありますので、まず専門医にご相談するのが一番です。