上司は「人間として偉い」わけじゃない

<座右の書『貞観政要』中国古典に学ぶ世界最高のリーダー論> 

出口治明[著] 株式会社KADOKAWA[出版]

上司も部下も、組織を運営するための機能のひとつにすぎません。チームで仕事を回すために、上司はたまたま上司の機能を割り当てられただけです。上司は部下よりも人間として偉いわけでは全くありません。人間には、頭や手足がありますが、必ずしも頭が偉いわけではありません。頭には頭の、手足には手足の役割があり、それぞれが機能を十分に発揮することで、より良く生きていけます。組織も同じです。

では、上司としての機能とは何でしょうか? それは一言で言えば、「人をまとめる」、「方向をしめす」という役割です。特に、中間管理職としての上司は、会社の方針を部下に伝え、部下がそれを理解しているか常に注意を払いながら、自分のチームをまとめて、会社から与えられた課題を達成して行かなくてはなりません。しかし、この本にかかれているとおり、それは管理職が部下よりも偉いからではなく、単に会社組織に於ける機能が異なるだけです。部下がいなくては仕事は何も回らなくなるのですから。このあたりはアドラーの言う「横の関係」と似ていますね。年齢、性別、立場が異なっていても、我々は人としての価値は同じ。部下には感謝と尊敬の気持ちを持って、今やるべき業務を説明し、チームとして一緒に取り組もうと語りかけたいですね。

この本の著者は、帝王学の教科書と呼ばれた『貞観政要』の中に、リーダーとして最も必要とされる力である「正しく判断すること」、つまり、正しく速やかに意思決定するためのヒントと心構えがあると考えています。そして、この本(貞観政要)には、上司として部下をどのように動かせば良いのかという上司側の視点と、部下としてどのように上司に直言すれば良いのかという部下側の視点の両方が書かれているので、管理職もそうでない社員も、どちらでも参考となる話が豊富に用意されています。

この本の真価は最後の編集後記にあるのかもしれません。まずここから読んで、何か感じるものがあったら購入して全部読むのがいいです。2つ書かれています。その1:人の器は大きくできるものではないから、中身を捨てて空っぽにすればよい。私は同じようなセリフをどっかで聞いた気がして、思い出しました・・・漢の劉邦は「大きな袋」である。中身が空っぽだから色んな人材を入れることができる。だから結局、彼は当初は圧倒的優勢であったの項羽を倒すことができた。

そしてその2:人生はプラスマイナスではない、絶対値としてとらえる。これはすごく斬新でした。考えもしなかった。出口さん、新しい視点をありがとうございます。どういうことかというと、例えば、熱愛の末、失恋したらマイナス500点。でも、次にいい人が見つかって今が幸せなのでプラス500点。だから今はプラスマイナス0点、というのではなくて、失恋の経験値|-500|、今の幸せをつかんだ経験値|+500|だから、今の人生経験値は絶対値1000点になるのだという発想です。確かに、そうとも言えますね。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする