機能拡張(プラグイン)としてのウィルス

<ウィルスは生きている>

中屋敷均[著] 講談社現代新書[出版]

コンピューターに例えれば、ある機能を果たすモジュールをウィルスが作り、それが感染に伴って宿主ゲノムに持ち込まれた。宿主ゲノムという巨大なOSは、その運び込まれたモジュールを自己のシステムに取り込み、新たなプラグインを実行できるように機能が更新されたのだ。

通常、我々の身体は自分とは異なるものが体内にある場合、免疫システムによりそれを排除する。その例外が妊娠中の女性の子宮内で育つ胎児だ。なぜ、胎児は母親の免疫システムから無事でいられるのか。それが胎盤という不思議な組織であり、その胎盤の最も特徴的な仕組みが、「合胞体性栄養膜」という特殊な組織である。そして、この特殊な膜を作るもととなるシンシチンというタンパク質は、ウィルス由来であることが分かった。

つまり、我々人類の祖先である生物は、どこかの段階でシンシチンを作る作用を持ったウィルスに感染し、その機能をウィルスから受け継いだことにより、胎盤を持つ哺乳類となったといえる。逆に言えば、そのウィルス無しでは我々人類を含む胎盤を持つ哺乳類は発生しなかった。カモノハシのように卵を産んで、お乳で育てる哺乳類のままだったのかも。

ウィルスというのは、むき出しの遺伝子そのものだ。遺伝という場合、普通は親からその子へと生物としての同じ種を通して伝えられるものだが、ウィスルの感染により、種を超えてクロスオーバーして伝わる。まるで、地球そのものが遺伝子のプールのようだ。いや、もしかすると宇宙そのものに遺伝子は満ち溢れているのかもしれない。

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